「フリーランス」の響きはいいけれど……驚くべき“脱法契約”の実態
わが国に存在する働き方には主に、正社員として勤務先に直接雇われ、雇用期間に期限のない「正規雇用」と、派遣社員や契約社員、アルバイトのように一定の雇用期間が決まっている「非正規雇用」、そして会社や団体などに所属せず、個人で仕事を請け負う「フリーランス」という3種類がある。
このうち、フリーランスがほかの2つと決定的に違うのが「会社組織に雇われていない」ということだ。芸能人や音楽家、作家など、専門的な技術や能力が必要とされる職種が想起されやすいが、昨今この働き方はYouTuberやWebデザイナーのほか、フリーランス業務のマッチングサービスが拡充したことにより、ITエンジニアやUberEATS配達員など、さまざまな職種にも広がりを見せている。
フリーランスは独立した事業主として、個別企業と「業務委託契約」を結んで仕事をすることが一般的だ。働き手にとってこの業務委託契約は、次のようなメリットがある。
- 自分で仕事を選べ、自身の都合に合わせたスケジュールを組めるなど、会社組織の枠組にとらわれない、自由と裁量が多い働き方が実現できる
- 労働時間の制限がないため、働けば働くほど収入も増え、働きが報われる
- スキルアップにかける費用などを経費計上でき、節税メリットと手取り収入の増加につながる
また依頼する企業側にとっても、以下のようなメリットがある。
- 高い専門性を持った人にピンポイントで業務を任せられ、自社人材で賄おうとした場合にかかる採用費用や人件費、教育コスト、社会保険料などを抑制できる
- これまで専門業務に従事していた自社社員の手が空き、本業に特化できることで、社内人材リソースを有効活用できる
- 労働関連の法律の適用を受けないので、採算やスケジュールを優先して仕事を依頼でき、発注側からの契約解除が(正社員の解雇に比べれば)やりやすい
従って、この契約形態をうまく活用すれば、依頼主の会社もフリーランスにとっても、双方にとってメリットのある働き方となり得る。しかし、メリットとデメリットは表裏一体。企業側にとってのメリットである「労働関連の法律の適用を受けない」とは、フリーランスにとっては「法律に守ってもらえない」ということでもある。具体的には下記の通りだ。
- 雇用契約(正社員)であれば労働基準法などで守られる、労働時間、賃金額(最低賃金額や割増賃金額)、各種手当(残業代、深夜手当や休日出勤手当)、賃金支払いの原則(全額払いや、毎月1回以上一定期日払いなど)、休日休暇といった各種保護が存在しない
- 厚生年金や雇用保険、福利厚生など、会社からの保障が一切なくなり、必要であれば自ら手続して支払いする必要がある。交通費や諸経費も自己負担となる
- 労働問題や労災事故が発生したとしても「委託先の問題」として発注主が責任逃れするリスクがある
- 取引先都合により、急に仕事が打ち切られたり、報酬金額を下げられたりするリスクが常に存在する
このように、「会社対従業員」といういわば主従関係から脱せられ、自由を得られる代わりに、「会社対取引先」という関係性に変わることで、より個人の責任範囲が大きくなる、すなわち全てが「自己責任」となってしまうのだ。
働く側がメリット・デメリット双方を理解し、企業側が適正に運用していれば、世の中全体としてもメリットの大きい業務委託形式。それでも、弁護士など専門家から懸念の声が挙がるのは「適正に運用しない企業」があるからに他ならない。
悪意ある企業は、「法律の規制と社会保障負担を免れる」という企業側だけにメリットのある部分だけをつまみ食いし、一方で正当な報酬を支払わず、いわば「自社の下請」として使いつぶそうとする。まさに制度の悪用なのだが、残念なことに、働く側も法律を詳しく知らないため、悪意ある企業の言うなりになってしまうという不幸なケースも散見される。
「不幸なケース」とは具体的にどのようなもので、働く側がトラブルに巻き込まれるのを予防するにはどうすればよいのか。詳しくは記事をご覧頂ければ幸いだ。
「フリーランス」の響きはいいけれど…驚くべき“脱法契約”の実態
(ITメディア)