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2022年04月22日
ポジティブ

吉野家元常務の舌禍事件から考える マーケティング業界の病巣とシニア権力を持ち続けるリスク

吉野家元常務の舌禍事件から考える マーケティング業界の病巣とシニア権力を持ち続けるリスク

4月16日、早稲田大学の社会人向けマーケティング講座の授業においてなされた、講師の問題発言が大きな話題となった。受講生のSNS投稿をきっかけに発言内容は即座に拡散し、性差別的、人権侵害であるとの猛烈な批判が相次いだ形だ。件の講師は週明けの18日、所属企業であった吉野家の常務取締役企画本部長職と、親会社である吉野家ホールディングスの執行役員から解任されたほか、19日に実施予定だった同社の新商品および新CM発表会も中止となるなど、広範囲に影響を及ぼした。

問題の講師は、グローバル大手の消費財メーカー「P&G」でブランドマネジャーや事業責任者を歴任してきたマーケティング業界の著名人であり、吉野家には2018年から参画。同社で若年女性向けのマーケティング施策を推し進め、現在の好業績に大きく寄与している功労者でもある。よって、一部のマーケティング関係者からは「彼はサービス精神のある人物だから、ウケを狙おうとしただけ」「たった一言でそんなに批判されるとは息苦しい」「そもそもマーケティング用語として一般的な概念だ」と擁護する意見も見られた。

もしかしたら、読者にも同様に思う方がいらっしゃるかもしれない。しかし、筆者として今般の騒動はそのような取り繕った見方では済まされない、大きな課題が顕在化したものだと認識している。気付かぬうちに古い価値観にとらわれてしまっている方は、この機会に考えを改める必要があるのではなかろうか。

既に各所で言及されている人権やジェンダーにまつわる問題点の解説は専門家諸氏に任せるとして、本稿では組織論や、発言者と同年代である40代後半~50代のシニア世代におけるリスクマネジメントの観点から述べていきたい。論点は3つである。

 

(1)会社として「ダイバーシティー&インクルージョンを実現し多様な『ひと』が活躍できる職場づくり」を掲げている組織の取締役が、ダイバーシティーに全く配慮のない発言を教育機関で行ったこと

(2)組織の中心となって動かしているはずのシニア層の見識や価値観がアップデートされておらず、周囲もそれを指摘できるような環境にないこと

(3)提供商品の熱心なファンも多い企業の取締役が、「家に居場所のない人が何度も来店する」「高い飯をおごってもらえるようになれば絶対に食べない」など、顧客への敬意も、自社商品への愛着も全く感じられないような表現を用いたこと

 

今般のケースは、コンプライアンスに対してセンシティブであるはずの外資系企業出身者による発言ということもあり、問題の根源は周囲の環境のみならず、世代や業界的な影響も多いものと捉えざるを得ない。

問題が生じる構造とリスク要因について、詳しくは記事をご覧頂ければ幸いだ。

吉野家元常務の舌禍事件から考える マーケティング業界の病巣とシニア権力を持ち続けるリスク

(ITメディア)

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