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2017年05月04日
ポジティブ

エイベックス 数億円の未払い残業代支払いへ

エイベックス 数億円の未払い残業代支払いへ

音楽大手のエイベックス・グループ・ホールディングスで、従業員のおよそ半数に対し、総額数億円規模の未払いの残業代があることがわかった。
エイベックス・グループ・ホールディングスによると、2016年12月に労働基準監督署から是正勧告を受け、全従業員1,500人を対象に勤務状況を調べたところ、およそ半数で残業代の未払いがあったという。 エイベックスは、調査対象期間の2017年1月までの未払い分を5月中に支払い、2月以降についても随時支払うことにしている。

当該問題に関して、フジテレビ「ホウドウキョク×FLAG7」においてコメントした。論点と意見詳細は以下の通り。

なぜ残業代未払いが全社員にあったのか?

⇒業界特有の事情と、みなし残業代に関する理解不足がある。

エンタテインメント業界、とくにエイベックスのような人気アーティストが多く所属する会社で、マネジメントや音楽制作といった中核部門であれば、仕事自体が夜にずれ込むことが多く、必然的に長時間労働、深夜労働になりがちである。

また同社の場合、月間約60時間が「みなし残業」扱いになっており、その分の残業代は基本給部分に含まれている。 本来はみなし残業時間を越えた分の残業代は別途支給されるのがルールだが、そのあたりがなし崩し的に運用されていたことが想定される。

このような事例は同社以外にも多くみられており、そもそもみなし時間超過分の残業代が支払われることさえ知らない人も多い。

エイベックスが未払い分を支払うことの評価は?

⇒広く名前を知られている大手企業で、かつ構造的にブラックになりがちな業界の有名企業が対応したことで、「労基署は本気で未払い残業代問題に取り組んでいる」というメッセージ効果は大きい。

業界事情を知っている人からは、「avexの決断がどれだけすごいことか…」と嘆息まじりで語られていた。

ただし建前上、残業は会社の残業指示によってなされるものであるから、「払うべきものを払わなかった上での好業績は捏造」であるともいえるし、本来やるべきことをやった、すなわち「マイナスをゼロにした」だけで「英断だ」と評価されるのはおかしい、という意見もある。

「外部から突かれる前に社内調査して、『未払い残業代が存在していたことが判明したので、すぐに支払うことにした』と自主的に発表すれば、今なら褒められる」という皮肉めいた意見も聴かれた。

労基署の勧告は妥当か?

⇒まず妥当なものと考えている。

「是正勧告」に至る労基署の調査にあたっては、一般的に従業員や元従業員からの申告が大きい割合を占める。そして最終的に勧告に至るには、会社の労働時間管理の実態について綿密な調査と背景理解があったものと思われるため。

ただし、是正勧告の罰則は「6ヶ月以下の懲役」や「30万円以下の罰金」といった微々たるものであるため、このような形で報道されることのほうが抑止力があるものと考える。

今回の件は「働き方改革」に繋がるのか?

⇒一定のメッセージ効果はあったが、まだ課題が残る。

まず、大手企業でも容赦なくこのように社名公開されるということで、コンプライアンス的に残業管理をきっちりやらないとまずい、という風潮になることは良いことである。

また労基署の是正勧告まで至るということは、社内の不満をうまく吸収できていないことが多い。放置すると今回のように企業の評判が落ち、株価まで下がるリスクもあるということで、対応が進む効果もあるだろう。

ただ、このような大手企業でなければ全国的に報道されることもなく、罰則も緩いため、企業としては「残業させ放題」のままということもあり得る。

労働基準法上、未払い残業代の債権消滅時効は「2年」だが、民法では「5年」である。 現状のままでは企業側にとって有利であるため、労働基準法も民法に合わせるか、もしくは時効を思い切って「30年」くらいに設定すればいいのではないか。 そうすれば企業は、退職後に労働者から莫大な支払いを請求されるリスクを恐れて本格的に残業禁止に乗り出すかもしれない。

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